講座の概要

ご挨拶

この社会連携講座は、株式会社NOBORI(以下NOBORI)とソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)の出資により立ち上げられた社会連携講座です。
東京大学大学院医学系研究科の連携講座として、人体病理学・病理診断学分野(牛久哲男教授)、分子病理学講座(宮園浩平教授)にもご支援いただいております。
講座の主な研究項目は
①:保険医療機関間の連携による遠隔病理診断のプラットフォーム構築研究
②:人工知能(AI)を活用して、病理診断の患者への未伝達防止のプログラム、画像解析技術による病理診断支援プログラムの開発
③:保険診療分野やゲノム医療など、国の政策に対する研究
④:診療報酬に関する研究
などです。

①:保険医療機関間の連携による遠隔病理診断のプラットフォーム構築研究

日本は病理医が不足しており、人口当たりの病理医数は米国の1/3以下、例えば400床以上の急性期病院(手術などを数多くこなす病院)のなんと約20%もの病院に病理医が勤務していません。病理医は患者さんから摘出された「体の組織」を、顕微鏡などを使用して悪性や良性の判定を下す医師で、「がん」かどうかの確定診断は、すべて病理医による「病理診断」によって行われます。さらに「がん」の治療薬を決定するため「遺伝子レベル」での診断「コンパニオン診断」もすべて病理組織検体を用いて行われており、「がんの診断」はもちろんのこと「がんの治療」にも欠かせない医師になります。このような重要な医師が日本では絶対的に不足しており、病理医が勤務していない病院では病理診断が行えず、患者さんがかかった医療機関によっては不利益を被るといった事態が起こっています。
このような病理医が勤務していない病院の病理診断を、病理医が常勤で勤務している医療機関で支援するための機器やネットワーク基盤等の整備に対する施策や助言を行い、遠隔病理診断のプラットフォーム構築を支援する研究を、放射線科の遠隔画像診断ではシェアのトップを占めるNOBORIと世界でもトップクラスのネットワーク基盤を提供するソフトバンクとともに行います。また遠隔病理診断を構築するにあたり国の補助金制度などの政策紹介等なども行います。
現在、東大病院では遠隔病理診断センターを立ち上げ、実際に保険診療として、遠隔病理診断支援を行っておりますが、遠隔病理診断センターでの病理診断の受託のみならず、今後は受託施設での病理診断体制や診療報酬、システムの充実等も研究対象として扱います。

②:人工知能(AI)を活用して、病理診断の患者への未伝達防止のプログラム、画像解析技術による病理診断支援プログラムの開発

病理診断の患者への未伝達による患者の健康被害が全国であとを絶ちません。人的資源の投入による対応やシステム対応などそれぞれの医療機関で行われておりますが、現場が疲弊することなく、必要最小限かつ十分な情報を担当医に伝えるためのAIを活用した病理診断未伝達防止システムをTXPメディカル(代表:園生智弘氏)とNOBORIの全面的な支援のもと開発します。最終的には様々な病理診断支援システムに組み込んで患者さんへの「病理診断未伝達防止システム」として頒布する計画です。
また「病理デジタル画像」を活用したAI病理診断支援プログラムを、希少がんの分野で開発する研究にも着手します。この開発にも、NOBORI、ソフトバンクAI開発グループとともに開発する予定です。

③:保険診療分野やゲノム医療など、国の政策に対する研究

ゲノム医療が開始され、2018年に全国に「がんゲノム医療中核拠点病院」が11か所指定され、そこに156病院(2019年4月現在)の「がんゲノム医療連携病院」が整備されました。次世代シーケンサを用いた「遺伝子パネル検査」も保険収載され、国民皆保険の中で、いよいよ「がんゲノム医療」が本格に稼働いたしました。それに関連する国の政策等の紹介やそれに関する研究も行います。

④:診療報酬に関する研究

診療報酬改定は2年に1回行われますが、この厚生労働省保険局医療課での診療報酬改定作業に外部委員として参加するようになって15年以上になりました。この間の経験を生かして、診療報酬(主に第13部病理診断)に関する様々な質問を受付け、解説等を掲載していくとともに、診療報酬やそれに関連する専門医の問題等にも取り組んでまいります。
東京大学大学院医学系研究科
次世代病理情報連携学講座 特任教授
佐々木毅